なんでこんなに読みやすく、しかし日本語の美しさは失わず、洒落ていて踊り出したくなるような物語が書けるのか。三島由紀夫って人は。
カテゴリー: 小説
『月と六ペンス』サマセット・モーム
とにかくこの小説が素晴らしい点のひとつに、個性的な登場人物たちの軽快なやりとりがあると思う。
ゴーギャンがモデルだという画家のストリックランドに、語り手の「私」である小説家、そこにオランダ人画家のストルーヴェが加わる会話はどれも、それぞれ声色を変えて口に出したくなるような小気味いいリズム感で書かれている。
『モーリス』E.M フォースター 小説と映画
特にこの抱擁のシーンは、素晴らしかった!少しずつ心を通わせていたふたりが、勇気を持ってお互いに触れる場面。モーリスが指の間にクライヴの髪をくぐらせ、その繊細な手触りから愛情を与え、また受け取る。思わずクライヴがモーリスに抱きつき、二人は呼吸を止める。
誰かに恋したことのある人間ならわかる、息を止めた後、全身からため息が漏れるあの感覚が、画面から伝わってくる。緊張と昂りと喜びが同時に押し寄せる演技、凄まじかった。
『怒り』吉田修一 小説と映画
吉田修一ファンとして、書かずにいることをモヤモヤしてるほどだったので、今回は『怒り』について。 まず、小説を読みました。上下巻、たっぷり時間をかけて読みました。それから映画を観ました。正直、結論から言ってしまうと、映画は …
『さよなら渓谷』吉田修一
最近、吉田修一さんにハマって、この人の本ばかり読んでいます。・悪人・怒り・最後の息子・東京湾景・パレード・横道世之介・春、バーニーズで・犯罪小説集・7月24日通り・愛に乱暴 今まで読んだのはざっと思い出すだけでこれくらい …
『雨心中』唯川 恵
あらすじ 施設育ちの芳子と周也は、実の姉弟のように生きてきた。芳子にとって、周也はこの世で唯一「私のもの」といえる存在だ。周也は仕事が続かないが、芳子は優しく受け入れる。周也を甘やかし、駄目にしてきたのは自分だと芳子はわ …
『夏子の冒険』三島由紀夫
あらすじ どんな男が相手でも満足しなかったお嬢様の夏子が、退屈さに愛想をつかし、函館の修道院に入ると言い出す。その道中、偶然見かけた青年、毅の目に情熱を見出し、彼を追いかけると決める。いざ夏子と知り合った毅は、ある目的を …
『仮面の告白』三島由紀夫
苦手だと思っていた三島由紀夫を手に取ってみた。 小さな書店で、新潮社の2019プレミアムカバーが並んでいるのを見て欲しくなった。ビビットなピンクは読み終わった今もこの作品にしっくりくる。三島由紀夫は、とんでもなく変態で、 …